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電気飛行機が客を運ぶ時代へ 古びた水上飛行機、改造で新たな役目 - Asahi Shimbun GLOBE

この水上飛行機が、重いエンジン音を響かせて最初に飛んだのは、1956年のことだった。

エルビス・プレスリーのシングル盤「ハートブレイク・ホテル」がヒットチャートの1位になり、ホワイトハウスにはアイゼンハワー大統領がいた。航空機の一時代を画したボーイング747にいたっては、まだ考案もされていなかった。

あれから63年。カナダ・バンクーバーを本拠とする水上飛行機の民間運航会社ハーバー・エアのデ・ハビランド・ビーバー機は、客席数六つながら、交通の不便なへき地にまで飛び、通勤の足となり、最近ではインスタ映えがする観光の一助にもなってきた。

そして、今、改造されて、先駆的な役割を果たそうとしている。化石燃料を大量に消費し、排ガスをまき散らすエンジンが、最新のバッテリー式電動エンジンに取り換えられた。旧式の飛行機に、持続可能性を担う新たな使命が与えられた。

この会社を設立した最高経営責任者(CEO)のグレッグ・マクドゥーガルは、事業の旗振り役でもある。飛行機を発明したあのライト兄弟も誇りに思ってくれるに違いない。それに、(訳注=電気自動車テスラの)イーロン・マスクも、そう思うことだろう。

「テスラの車を5年前に購入し、その技術革新にすごく感銘した」とマクドゥーガルは振り返る。「何とかこうした技術をうちの飛行機にも適用できないか。いつか、誰かがするのなら、自分たちがと思った」

運航する水上飛行機は40機。バンクーバーと米シアトルや近隣の沿岸地域を30分ほどで結ぶ路線をいくつも抱え、最大で19人までの旅客を運んでいる。

この飛行距離の短さが、バッテリー式電動エンジンに向いていた――電動モーターなどを設計・製造している米マグニクス社(訳注=本社ワシントン州シアトル)のCEOローイ・ガンザルスキーはそう指摘する。

1時間の充電で、30分飛ぶことができる(さらに30分飛ぶ余力を残した上で)。差し込み式の充電スタンドがバンクーバーの水上飛行場のドックにあり、地元電力会社のBC Hydroが水力発電によってできた持続可能な電力を供給している。

最初の試験飛行は、19年12月にあった。わずか10分だったが、マクドゥーガル自身が操縦桿を握った。規制当局の認可手続きに必要な第一歩で、審査には2、3年かかる見通しだ。認可されれば、ハーバー・エア社は運賃を取って電動水上飛行機を運航できるようになる。

「環境的には、二酸化炭素の排出がなくなるメリットがある。長期的には運航経費も軽減され、より多くの便数を飛ばし、より手ごろな運賃で、よりたくさんの旅客に利用してもらえるようになる」とマクドゥーガルはいう。

「シアトルとワシントン州立大学があるプルマンの間の移動を考えてほしい」とマグニクス社のガンザルスキーは話す。「娘に会いに行くのに、車だと5時間。民間機で飛べば450ドルもする。電動飛行機なら、運航経費がぐっと安くなって料金も下がり、100ドルで済むかもしれない」

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初飛行を終え、道路を横切って駐機場に向かうハーバー・エア社の電動水上飛行機=2019年12月10日、カナダ・バンクーバー近郊、Jonathan Hayward/The Canadian Press via AP

しかも、車で行くには不便で、飛行機を使うと高くつく都市間の移動ルートはここだけではない。全米には、何千もある。

これには、米エンブリー・リドル航空大学の航空宇宙工学教授で、電気推進の専門家パット・アンダーソンも同意する。「ハーバー・エア社のビーバー機のように空気力学的に優れた飛行機、もしくは軽量の複合材で製造された飛行機があれば、ビジネスチャンスは存在する」

カナダ側でも、バンクーバーがあるブリティッシュコロンビア州の関係者が注目している。バンクーバー島東岸の島内第2の都市ナナイモ(人口9万)の市議エリン・ヘメンズは、海をはさんだバンクーバーで会議があると、ハーバー・エア社の便に乗る。フライトは20分。フェリーなら3時間。勝負は明らかだ。

「ナナイモは、気候に優しい政策を手際よく実施していくことにしている。だから、今回の試験飛行には祝意を示したい」

では、もっと大きな民間機の電動化も進むのか。

「近い将来は無理」と先の教授アンダーソンは、首を振る。

「ビーバー機は、さほど大きなパワーを必要とせず、低い速度でよいからだ。高速で飛ぶとなると、今度は大変なエネルギーが必要になる。解決策は、はるかかなたにしかなく、現在の技術の最先端をもってしても、一大難問だ」

それでも、今回の初の試験飛行と、ハーバー・エアとマグニクス両社の提携は、称賛に値するとアンダーソンはいう。

「今回の初飛行には、個人的にもすごくワクワクさせられた」とガンザルスキーは笑みを浮かべる。「一つには、これで航空界を見る目が変わるという確信。さらには、我が子の空の旅も将来は変わるだろうという思い。そんな大きな変化が、発信されていたからだ」(抄訳)

(Mike Arnot)©2020 The New York Times

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March 27, 2020 at 03:01PM
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