
飛行機事故のシーンが登場するフィクション作品はこの世に数多くありますが、実際の飛行機事故がどのようなものか知っている人はほとんどいないはず。そこで、飛行機事故の調査官を長年にわたって務めてきたスティーブン・モス氏が、映画の中で描かれる飛行機事故のリアリティがどれほどのものなのか評価するムービーが公開されています。
Air Crash Investigator Breaks Down 12 Plane Crashes In Movies | How Real Is It? - YouTube
モス氏は35年間にわたって飛行機事故の調査官を務めてきた人物。今回は、さまざまな映画に登場する飛行機事故のシーンを見て、間違っている部分や正しい部分についてチェックするとのこと。

まずは2000年に公開されたホラー映画「ファイナル・デスティネーション」。映画の中では、飛行機内で電気的な問題が発生して火災が発生し、爆発するシーンが描かれています。

しかし、ブリティッシュ・エアツアーズ28M便火災事故やパンアメリカン航空103便爆破事件の調査にも携わってきたモス氏は、電気的な障害がこのような火災事故を起こしたケースは聞いたことがないと指摘。飛行機内で電気的な障害が発生した場合、徐々に煙が機内に充満するケースはあり得るものの、回路は保護されているため、いきなり爆発するような事態にはならないとのこと。

「どれほどリアリティがあるか」を評価するスコアは10点中3点。

ブラッド・ピット演じる元国連職員が主人公のゾンビ映画「ワールド・ウォーZ」でも、飛行機事故の様子が描かれています。

「まず最初に、飛行機の残骸は非常にリアリティがあります」とモス氏は指摘。

通常は隠されている飛行機の配線が事故によってむき出しになり、垂れ下がっているシーンも現実味が高く、モス氏のお気に入りだそうです。

なお、映画内では離れた場所に乗っていた主人公とゾンビが共に生存していますが、事故の状況によって違うものの、基本的に飛行機は後部か翼近くの中央が構造的に強いため生存率が高いとのこと。さらに、窓側よりも通路側の方が比較的生存する可能性が高いだろうとモス氏は述べています。

リアリティ・スコアは8点という評価でした。

続いて、2014年に公開されたアクション・スリラー映画の「フライト・ゲーム」。急降下する機内ではシートベルトをしていなかった乗客が天井まで浮かんでしまっています。

そこへ、銃の発砲があって窓に穴が空き……

窓とその周辺が一気に崩壊。手荷物が外へ飛び出していきました。

モス氏にとっては非常にリアリティに欠ける描写だったようで、「何が起きてるんだ?」と呆れた様子。窓の周辺は非常に強い構造になっており、窓が銃で撃たれた程度で窓全体やその周辺部が崩壊してしまうことはないとのこと。

スコアは10点中4点。

デヴィッド・フィンチャー監督の映画「ファイト・クラブ」でも、飛行機事故のシーンが描かれています。

次々と反対側の客席が吹き飛んでいく様子は衝撃的です。

このシーンについて、特に間違っている点はないと語るモス氏。実際の飛行機事故でもこのような状況が起こり得るとのこと。

このシーンで酸素マスクが下りてくるのは、機体が崩壊したからではなく急速に機内が減圧した結果。人々は何か大きな衝撃があると酸素マスクが下りてくると思いがちですが、酸素マスクが下りてくるのはあくまでも減圧の結果だそうです。

リアリティ・スコアは8点となりました。

続いて「ダイ・ハード2」。飛行機から蹴落とされたジョン・マクレーンが、飛行機から漏れた燃料に火を付けると……

炎が飛行機にまで到達して爆発。

このシーンを見たモス氏は思わず笑ってしまいました。

まず、マクレーンが機体の内部に手を突っ込み、燃料を噴出させるシーンはまず実現しないだろうとモス氏は指摘。

また、映画の中ではライターで燃料に火を付けていますが、実際には飛行機のジェット燃料はガソリンよりもはるかに可燃性が低いため、簡単に火は付かないそうです。

スコアは10点中2点。

デンゼル・ワシントン演じるパイロットが制御不能となった飛行機を奇跡的に着陸させる映画「フライト」では、パイロットの奮闘が描かれます。

飛行機のコントロールを取り戻そうとした主人公は燃料を捨てますが……

このシーンについてモス氏は、飛行機をコントロールするために燃料を捨てても効果はないだろうと指摘。もっと時間に余裕がある場合ならまだしも、今にも墜落しそうな緊急事態で燃料を捨てる選択肢はまずないとのこと。

飛行機が反転したまま飛び続けることに機体が耐えられるかどうかも怪しいそうで……

パイロットが操作をマニュアルに切り替えるシーンについても、重い飛行機を手動で操作するのは難しいだろうとモス氏は述べています。

リアリティ・スコアは5点。

続いて、ニコラス・ケイジ演じる宇宙物理学教授が主人公の映画「ノウイング」。横向きになった飛行機が高速道路に突っ込み……

大破しました。

このシーンを見たモス氏は、「今回見た中で一番現実的だと思います」と好評価。グラフィックもよくできているそうです。

しかし、大破した飛行機から炎に包まれた人が飛び出してくるシーンについては、これほどの事故であれば乗客は全員死んでいるはずで、あまり現実的ではないとのこと。

スコアは10点中8点でした。

次に、現実に起きたUSエアウェイズ1549便不時着水事故を題材にした映画「ハドソン川の奇跡」です。

映画では鳥がエンジンに巻き込まれて事故が発生していますが、モス氏は、エンジンが損傷することはあっても完全に停止することはないと指摘。飛行機が飛行を続けるための十分な動力は得られなかったかもしれませんが、完全に動力がなくなったような描写は正確ではないそうです。

映画全体を通して国家運輸安全委員会への反感が強い点も、モス氏はあまりお気に入りではないとのこと。

しかし、技術的な面でこれといって大きな問題はないそうで、リアリティ・スコアは10点中9点でした。

実在する大富豪のハワード・ヒューズの半生を描いた「アビエイター」では、ヒューズが偵察機XF-11のテスト飛行をするシーンがあります。

しかし、ヒューズは墜落して瀕死の重傷を負ってしまいます。

映画の中ではコクピットがかなり広々と描かれていますが、当時の軍用機のコクピットはパイプやメーターが至る所にあって非常に狭いものだったとのこと。そのため、偵察機として開発されたXF-11のコクピットがこのように広々としたものだった可能性は低いそうです。

また、ランディングギアが住宅の屋根の上を走るといった奇妙な点も考慮して……

スコアは6点となりました。

クリストファー・ノーラン監督による「ダークナイト・トリロジー」の完結編にあたる「ダークナイト ライジング」では、1つの飛行機を別の飛行機で無理やり引っぱる様子が描かれています。

吊られている飛行機の翼は吹き飛んでしまいました。

まずこのシーンで気になった点として、「あの飛行機をつり下げるために胴体に固定した装置は何なのか?」という点を挙げたモス氏。もし現実にこのシーンを撮ろうとした場合、つり下げられる側の飛行機にも事前の準備が必要になるだろうと指摘しています。

リアリティ・スコアは6点。

ウルグアイ空軍機571便遭難事故を題材にした映画「生きてこそ」の事故シーンを見たモス氏は……

「エンジンの音が完全に間違っています」と指摘。事故機はターボプロップエンジンを搭載していましたが、映画では急降下爆撃機が搭載する2気筒のレシプロエンジンの音がしているとのこと。

また、モス氏はコクピット内で「PULL UP(引き上げろ)」という警告ライトが点灯するシーンについて、対地接近警報装置が開発されたのは1974年のことであり、映画で描かれる1972年の事故の時点では存在しなかったことも指摘しました。

さらに、事故が起きてから飛行機が止まるまでの時間が長すぎるという点も指摘しており、スコアは10点中6点との評価。

「不屈の男 アンブロークン」は、第二次世界大戦中に日本軍の捕虜となった陸上競技選手ルイス・ザンペリーニ氏の伝記をもとにした映画。

主人公が乗ったB-24爆撃機が洋上に不時着するシーンが描かれています。

実際にはB-24が洋上にきれいに着水することは困難なので、不時着水するとわかっているのに砲手が砲塔にとどまり続けることはないだろうとモス氏は指摘。

しかし、全体的に見れば問題は少なかったようで、スコアは10点中9点と好評価でした。

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April 17, 2020 at 05:00AM
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